MAKI’s JOURNAL

わたしが日本と世界の食文化に惹かれる理由

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その土地で親しまれている料理を食べると、「どうして、この味になったのだろう」と気になることがあります。

使われている素材、しょうゆや味噌などの調味料、香りや甘みの加え方。同じ名前の料理でも、土地が変わると味わいが変わります。

その違いを知ることが、私は好きです。

そして、素材や食べ方に出会うと、そこから新しいアイデアが浮かびます。

「この香りを、別の食べ方にも生かせそう」
「この組み合わせを、もっと気軽に楽しめる形にできないだろうか」
「この土地で愛されているおいしさを、まだ知らない人に届けたい」

そんな関心が、今の食品の商品開発や、地域の食ブランドづくりにつながっています。

私を「だしソムリエを作った人」として知ってくださった方もいらっしゃると思います。その名前は、私の活動を多くの方に知っていただく入口になりました。

今回は、その背景にある私自身の関心についてお話ししたいと思います。名古屋の実家で身近に見ていた味の世界、企画・編集の仕事、だしソムリエの講座づくり。そして今、素材を組み合わせて考えているティーや、新しい商品づくりのこと。

振り返ると、それらは、土地ごとの食文化を知り、素材の持ち味を見つけ、新しい楽しみ方を考えるという、一つの関心でつながっています。

名古屋で身近に見ていた、だしと店の味

私の実家は、名古屋でだしの素材を扱う卸の仕事をしていました。味噌煮込みうどんや、きしめん、カレーうどんの店などに、だしを卸していました。

身近にあったのは、かつお節だけではありません。さば節や宗田節など、一般の家庭ではあまり使わない素材もありました。

素材の種類に加えて、削り方や厚さにも違いがあり、お客さまに合わせてブレンドも変わります。そうした世界を、おもしろいと感じていました。

「だし」と聞いて、昆布とかつお節で取る澄んだお吸い物を思い浮かべる方も多いと思います。一方、私の身近にあったのは、味噌やカレーと組み合わさったり、店の一杯を支えたりするだしでした。

だしだけを味わって終わるのではなく、その先に料理がある。合わせる調味料や、作りたい味によって、求められるだしも変わる。

同じうどんの店でも、目指す味は同じではありません。その店らしい味を作るために、素材を選び、組み合わせる。私にとって、だしはそうした味づくりと結びついたものでした。

だから、地域の食材と聞いたときにも、野菜や肉、魚そのものだけに関心が向くわけではありません。加工された素材や調味料、それらを組み合わせてきた知恵にも、その土地らしさを感じます。

私が地域の食文化に惹かれるようになった入口には、この名古屋で見ていた世界があります。

編集者の視点から生まれた「だしソムリエ」

私の仕事の出発点は、料理を教えることではありませんでした。

企業でのマーケティングや調査の仕事を経験し、その後、講談社の「Web現代」で企画・編集の仕事に携わりました。情報を集め、そこにある面白さを見つけ、どうすれば人に伝わるかを考える。そうした仕事に取り組んできました。

だしに関わるようになったときにも、私の中にはその視点がありました。

専門の世界では当たり前になっていることでも、外から見ると新鮮な発見があります。だしの素材にこんなに種類があること。素材ごとに香りや味わいが異なること。組み合わせによって料理の印象が変わること。

それを、もっと楽しく知る入口があってもいいのではないかと思いました。

ワインなら、産地や品種、香りや味の違いを楽しみます。だしにも、素材を知り、飲み比べ、自分の感覚で違いを見つける面白さがあります。

そんな発想から生まれたのが、「だしソムリエ」という名前です。

知識を覚えるだけでなく、実際に味わってみる。「こちらは香りが印象的」「この味は、あの料理に合いそう」と、自分の言葉で考えてみる。

専門的な知識と、日々の食の楽しさをつなぎたい。だしソムリエには、そんな企画・編集の視点も込めていました。

最初から、野菜や肉、魚にも「だし」を感じていた

だしソムリエを作った当初から、私の関心は昆布とかつお節だけに向いていたわけではありません。

野菜を煮たときに出てくる甘みや香り。肉を煮込んだ汁の深い味わい。魚や貝を調理したときに広がるおいしさ。

そうしたものにも、私は「だし」の面白さを感じていました。

例えば、野菜を煮た汁を味わうと、それぞれの素材が持っていた味や香りに気づきます。単独では控えめな味でも、ほかの素材と組み合わせることで、印象が変わることがあります。

食材は、形のある部分を食べるだけでなく、そこから引き出される味や香りも楽しめる。そのことを考えると、料理の見え方が広がります。

何を使えば、どんな味になるのか。どの香りを生かし、どの素材を組み合わせるのか。その発想は、昆布やかつお節に限らず、さまざまな料理に通じています。

私が伝えたかったのは、だしの正しい取り方だけではありませんでした。

素材を知ることで、料理をもっと自由に考えられること。いつも使っている食材にも、まだ気づいていない楽しみ方があること。その可能性を、一緒に見つけていきたかったのだと思います。

日本だけでなく、世界中に”だし”はある

その関心は、初めから日本の中だけに収まるものでもありませんでした。

フランス料理のブイヨンやフォン、中国料理の湯(タン)。呼び方や素材、調理の方法は異なりますが、世界の料理にも、素材からおいしさを引き出して味の土台を作る知恵があります。

「だしは和食だけのものではない」

これは、私が以前から伝えたいと思ってきたことです。

日本のだしを海外に紹介することにも意味があります。同時に、私自身は、世界の料理にある味づくりを知ることにも惹かれていました。

肉や魚、野菜をどのように組み合わせるのか。香草や香辛料をどう使うのか。引き出した味を、スープやソース、煮込み料理などにどう生かすのか。

そこには、その土地で手に入る食材や、親しまれてきた料理、人々が好む味が関わっています。

同じ素材でも、使う場所が変われば役割が変わります。日本ではなじみのある使い方でも、別の国では違う料理や味つけにつながるかもしれません。逆に、海外の料理の発想から、日本の素材の新しい使い方を思いつくこともあります。

そうした行き来に、私は面白さを感じます。

日本の地方料理も、世界各地の料理も、私の中ではつながっています。どちらにも、その土地の人たちが育んできた、おいしさの組み立て方があるからです。

私がこのブログで使う「地域の食文化」という言葉には、日本各地だけでなく、世界の土地ごとの食のあり方も含まれています。

資格講座づくりを通して、土地ごとの違いを深く知った

だしソムリエの講座やテキストを作る過程では、だしの素材や郷土料理について調べ、情報を整理する機会が増えました。

それによって、各地の食文化への関心は、さらに深まっていきました。

同じ魚を原料にしていても、加工の方法や使い方が違う。ある土地では身近な素材が、別の土地ではあまり知られていない。料理の名前は同じでも、味つけや食べ方が違う。

一つのことを知ると、次の疑問が生まれます。

「どうして、この地域ではこの素材を使うのだろう」
「この料理には、なぜこの調味料が合うのだろう」
「昔からの食べ方には、どんな背景があるのだろう」

テキストを作ることは、私にとって、そうした問いを掘り下げる時間でもありました。

一方、資格講座として学びを組み立てるには、受講する方が知りたいことや、専門的に身につけたいことに応える必要があります。そのため、講座では昆布やかつお節など、だしの基本となる素材を大切に扱ってきました。

その知識は、もちろん重要です。

ただ、講座の中で大きく扱ってきたテーマと、私自身の関心の全体は、まったく同じではありません。

私は、その知識の先にある「ほかの素材ならどうだろう」「別の料理にはどう使えるだろう」という広がりにも、強く惹かれていました。

今、このブログでは、そうした私自身の視点も、少しずつ丁寧に伝えていきたいと思っています。

だしと調味料を一緒に見ると、その土地の味が見えてくる

地域の味の違いを考えるとき、だしの素材だけを見ても、十分にはわからないと感じます。

しょうゆや味噌、塩、甘みの加え方など、料理に使う調味料との関係があるからです。

名古屋で身近だった味噌煮込みうどんも、だしと味噌を別々に考えるだけでは、その一杯のおいしさを捉えきれません。カレーうどんなら、だしにカレーの香りや味が重なります。

私は大阪のだしや料理に触れる中でも、名古屋で親しんできた味との違いに関心を持ちました。

何を強く感じるのか。だしの香りなのか、調味料の風味なのか。口に入れたときと、食べ終わったあとでは、どんな印象が残るのか。

違いを知ることは、どちらが優れているかを決めることではありません。その土地では、なぜその味が好まれてきたのかを考えることです。

もちろん、同じ地域の中でも、家庭や店によって味は異なります。「この地域のだしはこれ」と一つに決めてしまうと、見えなくなることもあります。

地域ごとの傾向を知りながら、目の前の一杯を味わう。その両方を大切にしたいと思っています。

それは世界の料理を見るときも同じです。素材だけでなく、調味料や香り、食べ方まで含めて見ると、その料理の魅力が少しずつ見えてきます。

素材を知ることから、新しい使い方を考えることへ

私にとって、食材や食文化を知ることは、その知識を説明するだけで終わるものではありません。

知るほどに、「これを、どんな形で楽しんでもらえるだろう」と考えたくなります。

地域で長く使われてきた素材にも、まだ知られていない魅力があります。地元では当たり前の味や香りが、ほかの地域の人には新鮮に感じられることもあります。

ただ、珍しいという理由だけで商品にしても、日々の暮らしの中で使ってもらえるとは限りません。

どんなときに食べるのか。誰が、どのように使うのか。どんな料理や飲み物にすると、その素材のよさを感じやすいのか。

素材の魅力と、使う人の生活をつなぐことが必要です。

例えば、香りが特徴の素材なら、その香りが生きる形を考える。味わいに厚みを加える素材なら、何と組み合わせるとよさが伝わるかを考える。慣れない素材なら、まず試してみたくなる使い方を用意する。

食品の商品開発では、素材そのものを見ることと、食べる場面を想像することを行き来します。

地域の食文化を知ることは、その発想の土台になります。昔からの使い方には、素材のよさを生かすヒントが詰まっているからです。

その背景を理解したうえで、今の暮らしに合う楽しみ方を考える。私が取り組みたいのは、そうした商品づくりです。

その関心は、今、ティーづくりにもつながっている

今、私が考えているティーづくりにも、これまでの関心がつながっています。

素材から味や香りを引き出すこと。いくつかの素材を組み合わせ、飲んだときの印象を整えること。どんな時間に、どんな気持ちで楽しんでもらうかを考えること。

そこには、だしについて考えてきた経験と重なる部分があります。

ただ、必ずしも「だし」という言葉を前面に出す必要はないと思っています。

飲む方にとって大切なのは、その一杯がおいしいこと。香りに心が動くこと。自分の好きな時間に、また飲みたくなることだからです。

私自身、香ばしい味や、甘さを感じる香りが好きです。お茶や穀物、果実などの素材を見ながら、自分が飲みたいと思える組み合わせを考えています。

現在、形にしようとしている「YURUMU」にも、そうした思いがあります。

忙しい時間の合間や、少し気持ちを切り替えたいときに、手に取ってもらえる一杯。そのために、どんな香りや味わいがあるとよいかを考えています。

だしからティーへ、と聞くと、離れたことのように感じられるかもしれません。でも、私の中では、素材を知り、おいしさを引き出し、新しい楽しみ方を作るという関心でつながっています。

地域のおいしさを、暮らしの中で楽しめる商品にする

地域には、長く受け継がれてきた素材や技術があります。その背景を知ると、簡単な言葉では説明しきれない価値があると感じます。

一方、その価値を商品として届けるには、初めて出会う人にも伝わる形にする必要があります。

作り手が大切にしていることを、そのまま詳しく説明するだけでは、受け手が自分の暮らしに結びつけにくいこともあります。

どんな味なのか。何と合わせるとおいしいのか。誰と、どんな場面で楽しめるのか。

そうした具体的な入口があると、知らなかった素材にも手を伸ばしやすくなります。

私は、企画・編集の仕事で培ってきた「何を、どう伝えるか」という視点を、商品やブランドづくりにも生かしたいと思っています。

中身のおいしさと、伝え方はつながっています。名前や言葉、見せ方によって、食べる前に抱く期待も変わります。その期待と、実際に味わったときの体験が合っていることも大切です。

日本の素材を海外に届ける場合にも、同じことがいえます。

その土地の人が普段どんなものを食べ、どう使い、どんな味を好むのかを知ること。そのうえで、素材の魅力が伝わる提案を考えること。

世界の食文化への関心は、そうした相手の暮らしを想像することにもつながっています。

このブログで、原点とこれからを伝えていく

このブログでは、食品の商品開発や味づくり、地域の素材の生かし方について書いていきます。

それとともに、日本各地や世界の食文化に触れて感じたこと、料理や素材から得た発見も伝えていきたいと思います。

私にとって、それらは別々のテーマではありません。

土地ごとの味の違いを知ることが、素材を見る目につながる。素材を知ることが、新しい組み合わせにつながる。そして、その発想が、商品やブランドを考えるきっかけになります。

だしソムリエを作った経験も、その流れの中にあります。そこで得た知識や出会いを大切にしながら、今は、私自身が初めから面白いと感じていた世界を、もっと広く伝えていきたいと思っています。

なぜ、この土地ではこの味なのだろう。
この素材には、どんな楽しみ方があるのだろう。
そのおいしさを、まだ知らない人にどう届けよう。

そんな問いを持ちながら、これからも「その土地のおいしさを、伝える」ことをしていきたいと思います。

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